
米国の研究チームは2026年6月10日、木くずに含まれる「リグニン」から、ナイロンの主原料となるアジピン酸を高い収率で作る方法を開発したと、学術誌「Nature」に発表した。化学処理と、遺伝子を改変した細菌を組み合わせる手法だ。
リグニンは、木の幹を硬くしている成分で、紙やバイオ燃料を作るときに大量に出る副産物だ。地球上で最も豊富な有機物の一つでありながら、構造が複雑で扱いにくく、多くはそのまま燃やされてきた。アジピン酸はナイロンの主原料の一つで、これまでは主に石油から、多くのエネルギーをかけて作られてきた。
研究チームはまず、ポプラの木からリグニンを取り出し、化学処理で分解して、芳香族化合物を多く含む油にした。この油から酸素を取り除き、別の反応で水に溶ける芳香族の酸へと変える。最後に、土壌にいる細菌を遺伝子改変したものが、この酸の大半を「ムコノラクトン」という中間物質に変える。これを化学反応でアジピン酸にする。
実験では、リグニンの重量に対して約26%のアジピン酸が得られた。条件を最適化すれば理論上は57%まで高められるという。リグニンから単一の製品を作る場合、従来の最高収率は約20%にとどまっていた。ポプラのほか、マツやカバの木でも同じ方法が使えた。
一連の流れは、還元と酸化を組み合わせる点で石油精製の工程に似ている。ナイロンは衣料品や自動車部品、3Dプリンターのフィラメントなど幅広く使われる素材で、その主原料を木材の廃棄物から作れれば、石油への依存と二酸化炭素の排出を抑えられる可能性がある。研究チームは、収率のさらなる向上を課題に挙げている。

