磁石にならない物質から光でデータを読み出す、東大などが新原理を実証

ハードディスクやメモリは、目に見えないほど小さな磁石の向きで0と1を記録している。その読み出しに、新しい原理が示された。東京大学と理化学研究所などの研究グループは、磁石としての性質を外に示さない「反強磁性体」から、光を当てて磁気の状態を読み出すことに成功した。スピンが立体的に並ぶことで光のねじれが生じる「トポロジカル磁気光学効果」を実証したもので、次世代の高速・大容量メモリにつながる成果として期待される。研究成果は2026年5月27日付で英科学誌Nature Communicationsに掲載された。

データを担うのは、電子が持つ「スピン」という性質だ。スピンは小さな磁石のように振る舞い、上向きと下向きの状態で0と1を表す。スピンが同じ方向にそろった強磁性体は全体が一つの磁石(磁化)になり、直線偏光の光を当てると、反射光の振動する向き(偏光面)がわずかにねじれる。このねじれの量から状態を読めるのが「磁気光学効果」で、長く情報の読み出しに使われてきた。一方、スピンが互いに打ち消し合う反強磁性体は外から見て磁石にならないため、この方法では読み出しにくいとされてきた。

研究グループは、コバルトを含む層状物質CoNb3S6に注目した。この物質ではスピンが四面体状に、同じ平面に収まらない形で並ぶ。すると電子は、実際には磁場がないのに磁場を受けているかのように振る舞う「仮想的な磁場」を、量子力学的な効果として感じる。これを利用して光を当てたところ、磁化に頼らないまま、強磁性体に匹敵する大きな偏光のねじれが現れた。磁化の大きさをそろえて比べると、従来の物質の100倍から1000倍にもなる巨大な応答だった。さらに、この効果を使って反強磁性体の状態を画像として捉えることにも成功している。

反強磁性体は、外に漏れる磁力がほとんどないため記録を高密度に詰め込みやすく、外からの乱れに強く、反応も速いという利点を持つ。これまでは状態を読み出しにくいことが弱点だったが、光で読める原理が示されたことで、反強磁性体を使ったメモリ開発が前進する可能性がある。研究グループは、光で磁気の状態を書き換えられる可能性にも触れている。私たちが日々使うスマートフォンやパソコンの記憶装置が、将来さらに速く、消費電力も小さくなるための土台の一つになるかもしれない。

関連情報

Infographic showing plus and minus pseudo-magnetic fields acting on a lattice: two cubes labeled 0 state and 1 state flanking a red/blue central field map with green upward arrows.

fabsceneの更新情報はXで配信中です

この記事の感想・意見をSNSで共有しよう
  • URLをコピーしました!

最新記事

YouTube / PodCast

【PR】読んで役立つ注目記事

目次