
米国の3Dプリンターメーカー、Inkbitは、電波を曲げて集める「ルーネブルグレンズ」を3Dプリントで一体成形する技術を、2026年6月7〜12日に開かれた国際会議「IEEE IMS」で発表した。米デラウェア大学との共同研究で、評価用のレンズはすでに同社サイトで販売している。
ルーネブルグレンズは、電波(電磁波)を一点に集めたり、方向を変えたりするレンズだ。性能を出すには、誘電率がレンズ内で連続的に変わる構造が要る。従来は誘電率の異なる殻を何層も組み合わせて近似していたが、つなぎ目で信号が損なわれ、精度や大型化に限界があった。3Dプリントでも、作れるサイズや帯域が狭いという課題が残っていた。
Inkbitは、印刷中の材料の付き方をカメラで監視して補正する「Vision-Controlled Jetting(VCJ)」という材料噴射方式を使う。これにより、波長より細かい格子構造を高い精度で作れる。素材には、100GHzでも信号の損失が小さいシクロオレフィン系の樹脂を独自開発した。格子の形を場所ごとに変えることで、誘電率をなめらかに変化させ、レンズ全体を一つの部品として印刷する。
共同研究では、直径100mmのルーネブルグレンズを作り、Ka帯、U帯、W帯にわたって性能を測った。動作は100GHzに達し、開口は波長の30倍を超えた。電波を一方向に集める強さ(利得)は34dBiを超えた。成果は2026年2月、SPIEの学術誌「Optical Engineering」に掲載された。
こうしたレンズは外部電源が要らず軽い。電力や重量に制約のある場面で、電子回路で制御するアンテナアレイの代わりになりうる。Inkbitは、ドローンや衛星地上局、フェーズドアレイレーダー、車載レーダー、AIデータセンターの配線などを用途に挙げている。複数の殻を組み立てる工程を、一回の印刷に置き換えられる点が、従来の作り方との違いだ。

