
マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、電子部品を一切使わずに表面の見た目が切り替わる物体を、3Dプリンターで一度に作る仕組みを開発した。押す、滑らせる、ひねるといった操作に反応して絵柄が変わる。実演では、薬品のびんのキャップをきちんと締めると緑になってチェック印が出て、緩んでいると赤になって感嘆符が出るものを作った。センサーも回路も入っていない。成果は、ユーザーインターフェースの技術を扱うACMの国際会議UISTで発表する。
見た目が変わる製品は、たいてい画面と電子回路に頼っている。ところがそうした物体は、水や薬品にさらされたり、押しつぶされたり強くひねられたりすると壊れてしまう。回路を使わずに表面の光学だけで見た目を変える手法も以前からあるが、シールや曲面レンズのような固定の仕掛けが中心で、見る角度によって絵が変わるだけだった。使う人の操作に応じて切り替えることはできない。
研究チームが作った「ShiftLens」は、物体の表面に2つの層を重ねる。上はレンチキュラーレンズを細かく並べた層で、見る角度によって光の進む向きを変える。下には、表面に出したい複数の絵柄を帯状に並べておく。上の層をずらすと、下の層の別の部分がレンズの視野に入り、それが拡大されて表面の絵柄が入れ替わる。複数の材料を扱える3Dプリンターなら、レンズも絵柄も本体も一度の造形で作れる。筆頭著者でMIT電気工学・コンピューター科学科のYunyi Zhu氏は、最大の難所は可動部の位置合わせにあり、光学的な効果と機械のリンク、計算で作る図柄の3つを互いに一致させる必要があったと述べている。
光学や機構に詳しくない人でも扱えるよう、設計ツールも用意した。表示させたい見た目の画像と、物体の形や曲面を入力すると、ShiftLensの構造が自動で生成される。ただし2つの層をずらす動きが必要になるため、どんな物体にも使えるわけではない。口紅の繰り出しのように元から回す動作がある物体に組み込むか、スイッチやノブ、ローラーといった作動機構を足すことになる。実演にはこのほか、ノブを回す向きによって赤いX、青いO、無表示を切り替える三目並べもある。
研究チームが応用先に挙げるのは、悪天候にさらされても機能する可変の警告標識、輸送中に留め具が緩んだことを知らせる包装、破損して漏れている継ぎ手を示す配管などだ。Zhu氏は、Makerの制作を楽にする道具として作ったものの、商用や産業用に規模を広げることもできると話す。今後は、利用者の入力をより少なくして構造を生成するアルゴリズムの開発と、組み込める作動機構の種類を増やす作業に取り組む。

