
スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)の研究チームが、半導体の製造と同じ手法で、ごく小さな有機EL(OLED)の画素を形作れる発光材料を開発した。論文は2026年9月16日付で学術誌Natureに掲載された。
ARグラスやカメラの電子ビューファインダーでは、画面の対角が1cmを切るものもある。画面が小さくなるほど画素も小さくなり、作るのが難しくなる。炭素を主体とする有機ELの材料は、結晶を切り出す一般的なLEDと違い、小さくしても明るさを保ちやすい。そのため極小の画素に向くとされてきた。
課題は作り方だった。半導体の製造では、光を当てた部分だけを残して細かな形を描く「フォトリソグラフィー」を使う。ところがこの工程で使う溶剤や薬品が、有機の発光分子を傷めてしまう。有機ELの材料は、半導体と同じ精密な工程に乗せられなかった。
研究チームは、発光する材料そのものに、光で固まる性質を持たせた。分子の中心に色を出す発光分子を置き、その周りに星のように腕を伸ばす。腕の先は紫外線を浴びると隣の分子の腕とつながり、網のような構造を作って溶けなくなる。光を当てた場所だけが残るので、そこが画素になる。腕の内側の部分は、反応する先端を発光分子から遠ざけ、薬品から守る役目も持つ。研究を率いたETHのChih-Jen Shih教授は、光る部分を内側に、反応する部分を外側に分けたことで、発光の中心をほとんど傷めずに露光の工程を通せると説明する。
精度を示すため、研究チームはオウムの絵を作った。大きさは300×430μmで、250×350画素からなる。異なる色の発光材料を並べ分けたもので、フォトリソグラフィーで作った多色の蛍光画像としては最も解像度が高いという。ただしこの絵は外から光を当てて光らせたもので、表示装置ではない。電気で光らせる例としては、1×2.4mmのETHのロゴを作った。
研究チームは今後、電気で光る画素をさらに小さくする。画面として使うには、画素を1つずつ別々に制御する回路がまだ要る。Shih教授は、小さな画面のほか、医療機器の微小な光源や、個々の細胞を調べたり、培養した神経細胞を光で刺激したりする研究用の装置にも使えるとみている。

