
電池の発火や、希少な材料への依存は、電子機器のエネルギー源につきまとう不安だ。ドイツのハンブルク工科大学を中心とする研究チームが、水と粘土と炭素という、ありふれた材料だけで動くスーパーキャパシター(蓄電デバイス)を開発した。塩も酸も加えず、電気を運ぶ役割を純粋な水だけに任せながら、6万回を超える充放電でも目立った劣化がなかった。成果は学術誌Nature Communicationsに載った。
スーパーキャパシターは、電池のように化学反応で蓄えるのではなく、電気をプラスとマイナスに分けて貯める部品だ。素早く充放電でき、寿命が長い。チームが作ったのは「ブルーキャパシター」と名付けたデバイスで、層状の粘土とグラフェン(炭素の薄い膜)を重ね、その隙間に幅およそ1nm(ナノメートル)の細い通り道を作る。1nmは、髪の毛のおよそ10万分の1の細さだ。
この極めて細い通り道に閉じ込めた水は、コップの中の水とは違う振る舞いを見せる。電気を運ぶ働きが高まり、電解液として使えるようになる。通常、水は1.23Vを超えると分解してしまうが、このデバイスは約1.6Vまで安定して動いた。
電気をためる能力は電極1gあたり40F(ファラド)、エネルギー密度は電極1kgあたり約10Whで、市販のスーパーキャパシターに並ぶ水準だという。充放電の効率は約97%で、6万回を超えても性能が落ちなかった。化学反応や電極のさびがほとんど起きないことが、長い寿命につながったとみられる。
燃えにくく、毒性のある薬品を使わず、地球にありふれた材料でできる点が、この方式の利点だ。エネルギー密度は電池に及ばないため、用途は急速な充放電や長い寿命が生きる場面に向く。安全で安い蓄電部品が安定して作れるようになれば、さまざまな機器の電源の選択肢も広がりそうだ。

