
中国民航大学などの研究チームが、飛行中のドローンにレーザーを当てて給電する受電素子を開発した。緑色レーザーの入射エネルギーのうち38.49%を電気に変え、静止したドローン模型のプロペラを回した。成果は2026年7月29日、Cell Pressの学術誌Matter & Lightに掲載された。
ドローンは長時間の任務や過酷な条件下で、搭載バッテリーの容量が制約になる。責任著者のJianhua Han氏は、森林の点検や災害の監視、荷物の配送にあたるドローンが、バッテリー交換のために頻繁に着陸せずに済む状況を目指すとしている。
素子はペロブスカイトレーザーセルと熱電素子を重ねたタンデム構造で、太陽光ではなくレーザーに合わせて設計した太陽電池にあたる。ペロブスカイト層がレーザーの光を電気に変え、熱電層は熱として捨てられるはずのエネルギーを回収する。熱電層は、レーザーが当たる面と反対の面の温度差が大きいほど多く発電する。
ところが強いレーザーは素子自体を加熱して効率を削る。Han氏によると、高出力レーザーで試したときにサーモカメラが示した温度は80〜90℃で、予想を大きく上回った。熱の蓄積が想定よりはるかに深刻な問題だと分かったという。論文では、温度が上がると結晶の乱れの度合いを示すアーバックエネルギーが増え、電子と格子振動の散乱が強まるため、変換効率が下がると説明している。
そこでチームは、セレン化アンチモン(Sb2Se3)のナノロッドを、ペロブスカイト材料のCsPbBr3に混ぜ込んだ。熱を伝えにくい性質を使って熱の壁として働かせ、熱の流れを遅らせる狙いだ。シミュレーションではナノロッドの熱伝導率を0.015W/(m・K)として計算した。熱電層をまたぐ温度差を保ったまま、レーザーセル側の動作温度を下げられる。混ぜたことで結晶性と構造の安定性、キャリアの輸送も上がった。
波長520nmの緑色レーザーを1平方センチメートルあたり1.2Wの強さで当て、気流を模した条件で測ると、変換効率は38.49%だった。同じ種類の技術を同様の条件で動かした報告のなかでは、最も高い水準にあたるとしている。
実証では、静止したドローン模型の翼の下に素子を組み込み、翼に空気の通り道を彫った。緑色レーザーを当てると模型のプロペラブレードが回り、さらにプロペラが起こす気流が熱電層の低温側を冷やして全体の性能を押し上げた。Han氏は、これまでの研究が材料や素子そのものに向いていたのに対し、機体にどう組み込み、動作中にどう冷やし、飛行と両立させるかを考えたかったと述べている。材料科学の問題ではなく工学の問題だという位置づけだ。
素子はまだ飛行していない。次は軽量のドローンに載せて屋外で安定して動くことを確かめる段階で、動いているドローンをレーザーで正確に追う方法と安全性の確保も残る。Han氏は、光で航空機に給油する可能性を示せたとしつつ、1から100へ進むには多くの工学的課題を解く必要があると述べている。研究は中国国家自然科学基金の支援を受けた。

