使用済み電池から純度80%で金属回収、SLACが複数AIに探索させる

米エネルギー省のSLAC国立加速器研究所は2026年7月22日、使用済みリチウムイオン電池からコバルトやニッケル、マンガンといった金属を取り出す方法を、複数のAIエージェントに探索させるプロジェクトを主導すると発表した。9カ月間で純度80%以上での回収を目指す。米エネルギー省が同日発表した国家プロジェクト「Genesis Mission」の第1段階に採択された。

電気自動車の使用済み電池1台には、数十ポンド(十数kg規模)の価値ある金属が含まれる。これらを回収できれば輸入に頼る現状を改善し、国内での供給源になりうる。ただし現在の抽出方法は大量の薬品を必要とし、廃棄物も多く出るうえ、条件を見つけるまでに膨大な試行錯誤が要る。プロジェクトを率いるSLAC-Stanford電池センターのAhamed Irshad Maniyanganam准科学者は、9カ月間でSLACと南カリフォルニア大学がAIによる提案と実験を何度も往復させ、対象金属を純度80%以上で回収することを目指すと述べている。従来の文献調査に基づく手法と比較して、その有効性を検証するという。

このプロジェクトの特徴は、1つの大規模なAIモデルに任せるのではなく、役割を分担した複数のAIエージェントを組み合わせる点にある。それぞれのエージェントが生化学から地質学まで異なる分野の知見を担当し、金属を分離する具体的な手順を提案する。提案した手順を実験で試し、その結果から学んで次の提案を改善していく流れだ。実験の指針を人間が文献から探すのではなく、AIが分野をまたいで候補を出し、実験結果でふるいにかける仕組みになっている。

プロジェクト名は「複雑な電池廃棄物からの選択的な重要金属回収における化学的駆動因子を発見するためのマルチエージェントAIフレームワーク」で、共同研究者にはSLAC-Stanford SUNCAT界面科学・触媒センター共同ディレクターのFrank Abild-Pedersen氏、SLAC-Stanford電池センター事務局長のJagjit Nanda氏、南カリフォルニア大学Viterbi工学部のJayakanth Ravichandran教授が名を連ねる。

Genesis Missionは、AI・スーパーコンピューター・量子システム・先端の科学装置を組み合わせ、科学的発見を加速させることを狙った米エネルギー省主導の国家プロジェクトだ。今回の公募には5000件を超える応募があり、278件が採択された。うち87件が国立研究所、168件が大学、19件が企業、4件が非営利団体の主導となる。公募全体の予算規模は2億9376万ドル(約479億円)で、第1段階の助成額は1件あたり50万〜75万ドル(約8150万〜1億2200万円)、期間は9カ月と定められている。SLACは今回の金属回収プロジェクトに加え、バイオテクノロジーや核融合エネルギー、電子機器とセンサー、宇宙論、素粒子物理学、加速器技術など10件のプロジェクトにも参加する。

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