米ユタ大がレーザーを1回当てるだけの微細加工を開発、数時間の工程が20秒に

米ユタ大学の研究チームが、レーザーを1回当てるだけで微細な立体構造を作り上げる加工手法を開発した。光の当て方を計算で設計した特殊なマスクを使い、厚さ0.72mmの樹脂の内部に狙った形の明暗を丸ごと投影する。1回の露光は約20秒で、同じ寸法の構造を従来の方式で作れば数時間かかる。壁の厚みはわずか6μmで、細さに対する高さの比は120倍を超えた。

微細な立体構造は、微量の液体を流す流路や小型のセンサー、光学部品の材料として求められている。ところが作り方には二者択一がつきまとってきた。層を積み重ねる方式や、レーザーで点を1つずつ描く方式は細かく作れる代わりに遅く、ミリメートル級の大きさになると数時間を要する。逆に樹脂の内部へまとめて光を当てる方式は速いが、作れる最小の寸法が25〜100μmと粗い。

厚い樹脂に一度で像を結ばせる難しさは、光の回折にある。マスクを通った光は進むにつれて広がり、輪郭がぼやける。研究チームの計算では、従来の遮光式マスクを使った場合、樹脂の表面から80μmほど進んだところで模様が崩れた。そこで、光を遮るのではなく位相をずらすマスクを設計した。ほしい明暗の分布を先に決め、そこから逆算してマスクの形を求める。計算にはTensorFlowで微分可能な光の伝搬モデルを組み、目標との誤差が小さくなるまでマスクの形を更新した。マスクは2μm刻みで1000×1000の画素を持つ。

この設計により、深さ0.72mmの全域でコントラストを83%以上に保てた。実験では厚さ0.72mmのSU-8樹脂を塗ったガラス基板に、波長405nmのレーザーを20秒当てた。できたのは800×800×720μmの格子で、六角形の壁の厚さは6μmに収まった。正方格子やペンローズタイル、非周期の「帽子」型タイルも同じ手順で作れた。層を重ねないため壁の表面が滑らかで、点を1つずつ描く方式で目立つ継ぎ目や粗さが出ない。

用途を確かめる試験も済ませた。内径68μmの筒を並べた格子に水を触れさせると、毛細管現象で1秒後に約169μm、20秒後に約243μmまで吸い上がった。電子顕微鏡の中で押しつぶす試験では、ひずみが9%を超えるまで弾性的に戻り、実効的なヤング率は5.7GPaだった。基板とマスクを少しずつずらしながら露光を重ねれば、より大きな構造も作れる。3回の露光で長さ2400μmの格子を68秒で、4回の露光で「UTAH」「2025」と読める4層の立体文字を92秒で仕上げている。

限界も数値で示した。深さを6400μmまで広げる計算では、壁の幅が16μmまで太り、コントラストは50%まで落ちる。責任著者のRajesh Menon氏は、この手法で作れるものを立体というより「拡張された2次元」と表現する。長さと幅と高さはあるが、形を制御できるのは前の2つだけだからだ。同氏は「マスクはクッキーの抜き型として働き、厚い生地から複雑な形を打ち抜いている」と説明する。研究チームは真の立体造形を次の目標に据える。成果は2026年6月4日、学術誌Nature Communicationsに掲載された。

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