レーザーで金属をかき混ぜ、混ざりにくい合金を3DプリントするNISTの新手法

金属の3Dプリントでは、溶けた金属をいかに均一に混ぜるかが難しい。米国立標準技術研究所(NIST)は2026年6月4日、レーザーで溶けた金属をかき混ぜながら造形する手法を発表した。レーザーの通り道を直線ではなく、楕円を描くようにループさせて、溶けた金属をその場でかき回す。これまで混ざりにくかった合金を作る道が開ける。

狙うのは「ハイエントロピー合金(HEA)」と呼ばれる材料だ。鉄に少量の炭素を加えた鋼のように1種類の金属を主役にするのではなく、5種類以上の金属をほぼ同じ割合で混ぜる。高い温度でも強さを保ちやすく、ジェットエンジンや原子炉での利用に向く。ただ、金属はそれぞれ密度や融点が違うため、冷える間に油と水のように分かれてまだら模様になり、強度が落ちる。鋳造では作りにくい。

一般的な金属3Dプリントの「レーザー粉末床溶融法」では、敷いた金属粉にレーザーを当て、テントウムシの目より小さな溶融池を点々と作って固める。直線で進むと、池のなかで金属はわずかしか混ざらない。NISTのHo Yeung氏は、レーザーをループさせながら進めて池をかき混ぜた。市販のソフトではこの軌道を描けないため、研究チームは制御ソフトを自作した。新しい部品はいらず、すでに現場にある装置でもソフトの更新で使えるという。

効果の確認も難所だった。溶けた金属が固まるのは1秒足らずで、その一瞬の原子の並びを見なければならない。チームはアルゴンヌ国立研究所の大型X線施設「Advanced Photon Source」を使い、歯科用X線の約5000億倍という明るいX線で固まる瞬間を捉えた。混ざりにくい「RHEA-19」という合金と軽いチタン合金が、新しい合金へと混ざる様子を確かめている。この観察手法自体も成果の1つだとしている。

将来は、あらかじめ調合した合金粉をいくつもそろえる代わりに、素の金属粉をプリンターのなかで混ぜ、その場で目的の合金を作れる可能性がある。オフィスのプリンターが4色のインクを混ぜて多くの色を出すのと同じ発想だ。1つの部品のなかで配合を少しずつ変え、溶接の継ぎ目なしに作り分けることも見込む。手元の装置の使い方を変えるだけで、金属を扱うものづくりの幅が広がりそうだ。

関連情報

Diagram of high-speed X-ray scattering showing laser melting of a metal sample and the evolution of its microstructure (before, during, after melting) with labeled phases: HCP, BCC, Icosahedral SRO, and BCC HEA at right.

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