
AMDは2026年7月23日、ロボット向けの組み込みプロセッサー「Ryzen AI Embedded X100シリーズ」と、それを載せたモジュール「Kria AI SOM」、開発キット「Kria AI Robotics Developer Platform」を発表した。同社が主催するイベント「Advancing AI 2026」での発表で、いずれも2026年第4四半期の量産を予定する。狙いはNVIDIAのJetsonが押さえてきたロボットの「頭脳」の領域だ。
X100シリーズは、最大16個の「Zen 5」CPUコア、単体GPU級の性能を持つ内蔵GPU、AI処理用のNPUを1つのチップに収める。特徴は、これら3つの演算エンジンが同じメモリー空間を共有する統一メモリー構造だ。CPUからGPU、GPUからNPUへとデータを明示的にコピーする手間が減るため、応答までの時間が短く、処理時間のばらつきも小さくなる。
ロボットの制御では、計算が速いことよりも「必ず決まった時間内に終わる」ことが重要になる。関節を動かす制御ループが時々遅れるだけで、動作は破綻する。AMDはBIOSとLinuxの調整、演算資源の優先度を管理するQoS機能、Zenアーキテクチャーの仮想化機能を組み合わせ、応答時間を予測できる設計にしたとしている。動作温度は-40〜105℃で、24時間365日の運転を10年間続けられる設計だという。
性能面では、Intel Core Ultra Series 3と比べてマルチスレッドのCPU性能が最大2.1倍、グラフィックス性能が1.7倍、大規模言語モデルのトークン生成速度が3.5倍だとしている。NVIDIA Jetson T5000との比較では、FP32演算のピーク性能が最大3倍だという。ただしこれらの数値は、X100の仕様に合わせて設定したRyzen AI Max+ 395を代用機として測定した結果で、実機での測定ではない。
Kria AI SOMは、X100を業界標準のCOM-HPC規格のモジュールに載せたものだ。従来のKriaモジュールと違ってFPGAはモジュール上になく、開発キット側の基板に搭載される。AMDによると、このプラットフォームは毎秒8000回を超える制御判断を下しながら、同時に100ミリ秒未満で視覚・言語・行動を統合したAI推論を実行できる。NVIDIA Jetson T5000との比較では、制御が時間内に終わる信頼性が最大3.4倍、空いているCPUコア数が1.6倍、同時に動かせるエージェント数が2.3倍だとしている。
ソフトウェアでは、PyTorchやONNX、ロボット開発の標準的な枠組みROS 2、動作計画のMoveItに対応する。AMD独自のROCmを使い、NVIDIAのCUDA向けコードからの移行では平均75%のコードをそのまま流用できるという。開発キットにはベースボードの回路図もオープンソースで提供する。
X100シリーズの顧客向けサンプル出荷は2026年6月に始まり、Arbor、Congatec、iBase、IEI、Sapphire、Seavoの各社がモジュール製品を用意する。X100は少なくとも2037年まで購入可能とする長期供給も表明した。

