
ソフトウェアの欠陥情報を集めて公開するスイスのVulDBは2026年10月24日、中国Unitree Roboticsの犬型ロボット「Go2」で見つかった新たな欠陥(脆弱性)2件を公表した。
FabSceneは2026年5月、米国の音楽家でハッカーのBenn Jordan氏が、近くからBluetooth経由でGo2を乗っ取れることや、Go2が中国のサーバーと暗号化した通信をしていることを動画で示したと報じた。それから5カ月の間に、米国はUnitreeを含む海外製ロボットへの規制を相次いで打ち出し、Unitreeは8月に上海の証券取引所に上場した。Go2の欠陥はその後も見つかり続けており、ソフトを最新にすればすべて解決するわけではない。
未解決の脆弱性も存在
今回の2件は、いずれもロボットが音声で会話する機能を受け持つプログラムにある。1件目は音量を変える操作に細工した値を紛れ込ませると、外部からロボットに好きな命令を送り込んで動かせるというものだ。欠陥の深刻さを0〜10で表す指標では9.6と、非常に高い。Go2の内部で動くソフトのバージョン1.1.11.5で、すでに直っているという。
2件目は、同じ会話機能が外部のサーバーとつながる際の暗号化通信にある。暗号化通信では本来、接続先のサーバーが示す電子的な身分証明書(サーバー証明書)を確かめ、正規の相手かを判断する。Go2はこの確認を無効にしていた。そのため、通信の途中に割り込める立場の第三者が偽のサーバーになりすましても、ロボットは気づかずに接続してしまうおそれがある。深刻度は6.3で、影響はバージョン1.1.15.1までに及ぶ。公表された記録に、直したバージョンは示されていない。
過去に見つかった欠陥も、直ったものと直っていないものが混在する。2026年2月に公表された2件(同じネットワークに入った第三者がGo2を乗っ取れるものなど)は、見つけた研究者によると、Unitreeがバージョン1.1.13で修正を配布した。一方、5月に報じたBluetoothでの乗っ取りは、欠陥の記録が6月の更新で影響範囲をバージョン1.1.8までとしたが、Jordan氏は5月の動画で当時の最新バージョンでも再現したとしており、直ったかどうかは資料によって食い違う。
更新の仕組みそのものにも欠陥が残る。2026年2月に公表された欠陥では、ロボットが受け取る更新ファイルは暗号化されているものの、暗号を解く鍵の材料がロボットのソフトに埋め込まれていて、誰でも取り出せる。そのため第三者が中身を書き換えた更新ファイルを作っても、ロボットは本物と区別できない。公表時点でUnitreeの現行の全製品が対象とされ、記録には直したバージョンの記載がない。ただし、持ち主に気づかれずに偽の更新を入れる手段は公表されていない。中国のサーバーとの通信を巡る指摘には、Unitreeが答えた公式の発表は見つからなかった。
Unitreeの対応は、2025年と2026年で様子が違う。2025年にBluetoothでの乗っ取りを見つけた研究者らは、Unitreeから「修正に数年かかるかもしれない」と伝えられたと記録している。2026年には、Unitreeが報奨金を払って欠陥の報告を受け付ける窓口を運営し、研究者とやり取りしている。人型ロボット「G1」の乗っ取り方を8月に公表した研究者のOlivier Laflamme氏は、窓口の対応が速かったと自身のブログで評価した。今回の2件についても、Unitreeは報告を受けて社内で管理していると回答している。ただ、上場に向けて投資家に示した説明書では、事業のリスクとして米国の関税や輸出の規制を挙げる一方、製品の欠陥やサイバー攻撃には触れていない。
国内でも導入が進む中で、放置すれば何が起きるのか
Go2は国内でも買える。ロボット販売のTechShareは2020年からUnitreeの正規代理店を務め、2023年9月にGo2の予約販売を始めた。同社によると、主な買い手は企業の研究開発部門や大学、官公庁だ。2026年6月には、GMOインターネットグループのGMO AI&ロボティクス商事(GMO AIR)も正規代理店となり、Go2やG1の販売を始めた。国内で何台売れたかはどの資料にも書かれていない。JR東日本ビルテックは2025年9月に車輪付きのGo2で東京駅の見回りを試し、2026年3月にはZEALSが筑波大学附属病院でG1に道案内をさせた。これらの発表に、通信やデータの扱いについての説明はない。
欠陥を放置した場合の危険を、研究者らは具体的に挙げる。Bluetoothでの乗っ取りを見つけた研究者らは、ロボットが人質事件や爆発物の処理で使われている例を挙げ、1台を乗っ取れば近くにある同じ型のロボットを次々に操れると警告した。研究者のVíctor Mayoral-Vilches氏は2025年9月の論文で、G1が音声や映像などのデータを、利用者に知らせずに外部のサーバーへ送り続けていると報告している。
Unitreeの競合にあたる米Boston Dynamicsのソフトウェア担当副社長Matthew Malchano氏は、2026年3月の米下院の公聴会で、乗っ取られたロボットは敵意を持つ人を建物に招き入れるのと同じだと証言した。工場なら製造ラインを壊したり、流れる部品を撮影したりできるという。米連邦通信委員会(FCC)は7月、海外製の人型や四足のロボットのうち、新しい機種を原則として米国で売れなくした。理由として、集めたデータで米国人が監視されるおそれや、遠くから乗っ取られるおそれを挙げている。すでに売られている機種や、購入済みの機体は対象外だ。
国内では、GMO AIRが8月、販売したロボットの通信を見張り、怪しい通信を見つけたら知らせる「GMO SAFE」を始めた。対象は同社から買った人型ロボットで、機種ごとにリスクを調べたうえで提供する。同社の内田朋宏社長は発表で、リスクを把握したうえで安全に使うとの考えを示している。

