
ショウジョウバエの脳から取り出した神経の配線を、そのままマイコンで動かす試みがGitHubで公開された。学習は一切させておらず、画面の中のハエは配線の働きだけでクモから跳んで逃げる。作ったのはslvDev氏で、コードはMITライセンスで公開されている。
使ったのは、雄のショウジョウバエの中枢神経系について神経の接続を網羅した地図「MaleCNS v1.0」だ。米HHMIジャネリア研究所や英ケンブリッジ大学、Google Researchなどが作成したもので、ここから脳の中枢と視覚、脳から体へ指令を送る神経を中心に、4万8311個のニューロンと946万2135本の接続を取り出した。接続ごとのシナプスの数も、そのまま保っている。
動かすのはESP32-S3のボードで、フラッシュは16MB、PSRAMは8MBある。問題はメモリーだった。接続のデータは圧縮しても約14MBあり、PSRAMに入りきらない。そこで圧縮したままフラッシュに置き、計算に使う部分だけを展開してPSRAMに一時的に残す。2つのコアがSIMD命令で全接続をたどり、脳の状態を1回更新するのに約1.7秒かかる。画面の描画は別に回しており、更新の合間もハエとクモは動き続ける。
逃げる動作そのものはプログラムしていない。クモが近づくと、その方向にある、迫る物体を検知するニューロン(LC4とLPLC2)に入力が入る。信号は配線を伝わって広がり、左右4個ずつある逃避のニューロンに届く。片側の活動が決めた値を超えると、ハエは反対側へ跳ぶ。そこには、実際のハエに跳躍を起こさせる巨大な神経DNp01も含まれる。作者が用意したのは、画面の中の世界と、入力と出力にあたるニューロンの一覧、そして閾値1つだけだ。
作者は事前に、配線が狙いどおりに働くかを確かめた。迫る物体を検知するニューロンを刺激すると、逃避のニューロンは、無作為に選んだ視覚ニューロンを刺激した場合の30〜100倍強く反応した。
脳のすべてではない。神経系全体は損失なく圧縮しても24.49MiBになり、残るフラッシュの約14MBには収まらない。神経の動きも単純化している。更新に時間がかかるため反応が遅れ、クモに捕まることもあると作者は書いている。

