高価な専用モデムは不要、7万円台のIoT機器で衛星と通信

赤道の上空3万6000km、地球の直径のおよそ3倍離れた宇宙空間に、静止衛星が浮かんでいる。スペインのISURKIは、そこと直接やりとりする計測機を7万5000円ほどで組み上げ、その手順と実測を公開した。専用の衛星用モデムも、大きなパラボラアンテナも積んでいない。

衛星につながる機器は高い。専用の衛星モデム1つで、計測機一式より高くつくことがある。その値段が地図の上に線を引いてきた。携帯の電波が届く場所は遠くから見張れるが、届かない場所は人が見に行くか、あきらめるかだ。地球の表面で線の内側にあるのは、およそ15%しかない。

同社の産業用データロガー「ISURLOG」は、もともとNordicのnRF9151を積んで地上の携帯網につながっていた。同じチップが衛星通信にも対応する。3GPPが定めたNTNは、携帯電話向けの通信手順をそのまま衛星へ向ける仕組みで、専用の無線機を足す必要がない。実際に要ったのは、モデムのファームウェアをNordicの衛星版に差し替えることと、ATコマンドをいくつか送ることだけだった。基板もアンテナも変えていない。

面白いのは、機器の側が自分の居場所を申告しなければならない点だ。携帯の基地局が相手なら、自分がどこにいるかは基地局の知ったことではない。ところが3万6000km先が相手だと、電波が往復する遅れを見込み、どのビームを使うかを決めるために、機器の緯度経度と標高が要る。そこで「AT%LOCATION」という、地上向けには存在しないコマンドが用意されている。位置は手入力でもよく、同じチップのGPSで測ってもいい。そのGPSの電波も、通信に使うのと同じ1本のアンテナで拾える。

つながるまでも遅い。地上のNB-IoTなら数秒で終わる登録に、Skyloの静止衛星では約5分かかった。原因は特定できていないと同社は書いている。

送り方も変わった。衛星の回線ではUDPしか通らず、TCPが使えない。TCPは相手とつなぎっぱなしにして、送るたび受け取りの合図が素早く返ることを前提にする。短い窓しか開かない衛星ではそれが崩れる。つまり投げっぱなしで送るしかなく、送り直しも二重着信の取り除きも自分たちで書くことになった。

電池の問題も残る。地上向けのファームウェアにはモデムを眠らせるコマンドがあるのに、衛星版の一覧には見当たらない。深い眠りで約20µAという設計の製品にとって、送信の合間もモデムが起きたままなのは重い。

基板は387ユーロ(約6万9000円)、アンテナと電池を含めて約417ユーロ(約7万5000円)になる。ファームウェアはMicroPythonをもとにGPL-3.0で公開し、ATコマンドのやりとりも実際のログのまま載せている。

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