
英インペリアル・カレッジ・ロンドンが、太陽風の磁場を測る超小型の磁力計「MAGIC」の実機を完成させた。欧州宇宙機関(ESA)のCubeSatミッション「HENON」に搭載され、2027年前半に打ち上げられる。太陽嵐の警報を出せる時間を、現在の約15分から2〜3時間へと10倍に延ばすことを狙う。成果は2026年7月20日、英バーミンガムで開かれた王立天文学会の全国天文学会議で発表された。
MAGICのセンサー部分は体積8cm³、重さ23gで、個々の検出素子は1mm未満だ。同じ研究室が太陽探査機Solar OrbiterやJUICE向けに作る磁力計は数kgあり、消費電力も最大20Wに達する。対してMAGICは1W未満で動く。感度では大型機に及ばないが、桁違いに小さく安いため、複数の機体に載せて連携させる使い方ができる。
小型化の鍵は、異方性磁気抵抗(AMR)方式のセンサーにある。宇宙科学で標準的に使われるフラックスゲート型と比べ、質量も消費電力も約10分の1で済む。それでいてESAが宇宙天気監視に求める水準は満たす。CubeSatという小さな機体に載せられること自体が、このミッションの前提になっている。
現在の宇宙天気予報は、地球から約150万km離れたラグランジュ点L1に置いた探査機に頼る。ここで太陽風を観測しても、速いコロナ質量放出(CME)の場合、警報を出せるのは到達の約15分前でしかない。これは技術ではなく距離の問題だ。HENONはL1の10倍にあたる約1500万km上流まで進み、より早い段階で太陽風を捉える。
太陽フレアやCMEが地球に届くと地磁気嵐を引き起こし、衛星や通信、測位システム、送電網に障害をもたらす。到達時刻の予測はすでに可能だが、影響の深刻さの予測は難しい。CMEが運ぶ磁場の向きに左右され、宇宙空間で直接測るしかないためだ。深刻な宇宙天気は英国の国家リスク登録簿にも記載されている。
HENONを率いるインペリアル・カレッジのJonathan Eastwood教授は、小型化したMAGICが深宇宙を飛ぶのは今回が初めてだと述べた。この設計は第4世代にあたる。2012年のCINEMA、2021年打ち上げのRadCubeに搭載され、RadCubeは2024年5月に発生した20年で最も強い地磁気嵐の際に軌道上にあった。実際の嵐の中で得たデータが、今回の設計に生きている。
HENONはESAの技術実証ミッションで、イタリアのArgotecが主導する。ESAのPLATOミッションと同じロケットに相乗りし、チェコ製の太陽風観測機器とフィンランド製の高エネルギー粒子検出器も積む。目指すのは「遠方逆行軌道」で、1969年にフランスの天文学者Michel Hénon氏が考案した軌道だ。ここを飛ぶ探査機は史上初となる。成功すれば、ESAが計画する常時監視ミッション「SHIELD」につながる。

