
GPUの設計は、ごく一握りの大手が握り、中身は公開されない。そこに風穴を開けるのが、回路から開発環境まで丸ごと公開されたGPU「Vortex」だ。米ジョージア工科大学の研究チームが開発したオープンソースのGPUで、最新版でグラフィックスを描く3Dパイプラインにも対応した。
Vortexは、オープンな命令セット「RISC-V」を少しだけ拡張して作ったGPUだ。これまでGPUの設計図がほとんど公開されてこなかったのは、命令セットやソフトの仕組みが複雑だったからだ。Vortexは変更を最小限にとどめ、誰もが手を入れて育てられる形を目指した。設計図にあたるハードウェアに加え、コンパイラーやドライバー、実行環境までを一式で公開している。
もともとVortexは、GPUで一般の計算をこなす「GPGPU」向けで、OpenCLという仕組みに対応していた。今回、3Dの絵を描くグラフィックスのパイプラインが加わり、汎用計算と描画の両方を1つのオープンな土台で扱えるようになった。
動かし方も幅広い。パソコン上のシミュレーターで試したり、回路を書き換えられるチップ「FPGA」に書き込んで実機として動かしたりできる。XilinxやAlteraのFPGAに対応する。研究者が新しいGPUの仕組みを試したり、学生が中身を学んだりする土台として使える。
大手の閉じた設計に対し、回路まで開かれたGPUは、個人や小さな研究室でも仕組みを確かめ、作り替えられる。最新版の3.0では、AI計算に効くテンソル演算の機能や、不具合を追うためのデバッグ機能も加わった。GPUの設計を一部の企業だけのものにしない、息の長い土台を目指す試みと言えそうだ。

