
東京大学大学院情報理工学系研究科の中嶋浩平准教授らとNTTの研究グループは、光で計算する装置に合わせて、学習の手順とネットワークの構造をともに単純にした深層学習の枠組みを開発した。現代的なニューラルネットワークに組み込むと、性能を上げながら計算資源を約40%減らせた。成果は2026年11月5日、学術誌「Nature Computational Science」に掲載された。
光や電気回路などの物理現象そのものを計算に使う「物理AI」は、AIの消費電力を抑える方法の1つとして研究されている。東京大学によると、従来のAIの学習法を光などの物理系で動かすには、多くの計測や制御、データの保存が必要になり、技術的に難しい場合がある。
一般的な学習法は、システムが変化していく途中の状態を測って記録し、最後にさかのぼって何をどれだけ変えるべきかを決める。研究グループが考案した学習法「SS-DFA(state-skipping direct feedback alignment)」は、途中の状態の大半を読み出さず、最終的な誤差とシステムの情報を使って学習を進める。中嶋准教授はこれによって計測やデータの保存、計算の量を減らせると説明する。
研究グループは構造の面でも、複雑な内部の結線に頼らず、多くのユニットが共通の単純な規則に従う「single-map」と呼ぶ構造を設計した。同グループは計算機上のシミュレーションと、光で計算する実験装置の両方でこの組み合わせを試した。実験装置は情報を光の信号に変え、長さ200mの光ファイバーのループを通して処理したあと、電気の信号に戻して解析する。計算に使う電子部品は少数で済む。
論文によると、この枠組みは通常の深層ニューラルネットワークと同等の性能を保ちながら、計算コストと学習で調整するパラメーターの数を大きく減らした。東京大学は、単純な構造が一部の試験ではより複雑なネットワークを上回ったとしている。
中嶋准教授は現時点では比較的基本的な現代のネットワークに組み込んで試した段階で、最大規模の言語モデルやマルチモーダルモデルではまだ試していないと述べた。同准教授は、装置を小型化してチップに統合できれば、スマートフォンやカメラ、自動運転車の中で直接データを処理できる可能性があるとする一方、実用化までには小型化や安定性、大規模な製造の課題が残るとしている。

